対談_後編

人に恵まれた人生 ~幻冬舎ブランドコミック対談 後編~

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小田真嘉(おだ まさよし)
株式会社小田総合研究所 代表取締役、株式会社みらいのくらし研究所 代表取締役

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石原 正康(いしはら まさやす)
株式会社幻冬舎 専務取締役、株式会社幻冬舎ブランドコミック 取締役

対談の前編はこちらから

「いくつになっても経営者に必要なものがある。それは“可愛げ”だよ」

石原正康(以下、石原)  前回は漫画に描かれているエピソードや、その裏話などをお聞きしました。タイトルが『僕に人生の闇を教えてくれた先生たち』ですが、漫画に登場していない方で印象に残っている「先生」はいますか?

小田真嘉(以下、小田)  たくさんいます。私は運がよくて、本当に人に恵まれてきたと思っています。素晴らしい方々にたくさん出会い、話を伺い、数えきれないほど大切なことを教えてもらいました。

石原  例えば、どんなことですか。

小田  23歳から1年くらいかけて、さまざまな経営者の方にお会いする機会に恵まれました。当時の私は、いろいろな事業に手を出しては失敗を繰り返していて、ゼロから経営を学び直そうと思ったんです。セミナーに参加したり、そのつてを使って経営者を紹介していただいたり、ひたすらアポをとっては経営者巡りをしていました。

仕事とはまったく関係なく、ただ話を聞きに来た23歳の若造に、みなさん本当に親切にしてくださいました。しかも、「どうしたら成功できますか?」「ビジネスの秘訣はなんですか?」という直球な答えばかりを求めていましたね。

その中で、ある経営者の方がおっしゃった言葉が今でも私の教訓になっています。「いくつになっても、経営者に必要なものがある。それは、“可愛げ”だよ」という言葉です。そのときは正直「は?」という感じでした。23歳の私にはまったく理解できず、そんなことはいいから成功の秘訣を教えてほしいと(笑)。

石原  もっと具体的な肝が知りたいと(笑)。

小田  そうそう。「60歳、70歳になっても可愛げがあれば、絶対にその人の人生は大丈夫」と言われても、全然意味がわからない。だから私も質問を繰り返すわけですよ。「可愛げってなんですか?」と。すると、「愛されることだ」と。さらにちんぷんかんぷんになって、こんな会話が続くわけです。

「ビジネスで愛されるってどういうことですか?」

「君のためになら、みんなが喜んで働いてくれることです」

「どうしたら愛されますか?」

「小田さん、想像してほしいんだけど、君が犬を飼っていたとしよう。家に帰って玄関を開けたら犬が走って飛びついてきて、尻尾を振って喜んでいたらどう思う?」

「かわいいですね」

「でしょう。それが大事なんです」

「従うということですか?」

違う違う、表現することだよ。小田さん、覚えておきなさい。愛され上手は喜び上手なんだ。何かをしてもらったときには喜びを表現しなさい。みんな、その表現ができないから愛されない。何かプレゼントされたら、『ありがとうございます、嬉しいです!』と気持ちを表現すれば、もっと何かをしてあげたいと思うものなんです。人は人に何かをしてあげたい生き物なんだから。でも、この世の中には何かしてあげたいと思われない人もいるんです。それが、喜び下手な人。だからね小田さん、何かしてもらったら喜べる人になりなさい。表現しなさい。そうすれば、君は愛されるし、可愛げがあるし、いくつになっても君は大丈夫だから」

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石原  なるほどね。深いな。とても勉強になります。

小田  でもね石原さん、23歳でこんな話を聞いてもわからないわけですよ。この教えが生きてくるのは後々のことです。

石原  どれくらいで、「なるほどな」と思えたんですか?

小田  それでも2年後には、なんとなく理解できましたね。きっかけは「あー、可愛げがないってこういうことか」と思う人に会ったことです。

「この人の経営者としての寿命はあと2年だな」と感じた経営者がいました。たまたまタイミングが合って今は勢いにのっているけど、きっとこの人からは人が離れていくだろうなと感じたんです。人は、この経営者の人柄に集まっているのではなく、お金に集まっているというのがわかってしまった。「可愛げ」の話を聞いていたから気づけたのだと思います。

石原  小田さんは「可愛げ」のあるタイプだと思いますが、それはもともと?

小田  いや、鍛えられましたね(笑)。この話を聞いた当時の23、4歳の頃は、自分がこれだけいろんな人に会えて、いろんな話を聞けるのは、自分の実力だと天狗になっていたこともありました。

でも、27歳になったときに、「それにしては、俺の人生、できすぎだぞ」と思い始めたわけですよ。いろんな人に可愛がられて、引き立てられて。ものすごいステータスの方々にプライベートで家に呼ばれたり、家族ぐるみの付き合いをしたりするわけですからね。

それで、あるときわかったんです。「あー、俺は何か持っているから可愛がられているんじゃない。将来、いろんな人たちに出会い、その人たちに伝えるために、先に教えてもらっているだけなんだ」と思えたんです。

石原  ほー、素晴らしいですね。

小田  自分の役割というものを認識した途端、ご縁が爆発して、それまでの闇の人生を抜け出すことができたのだから、本当に不思議ですよね。

自分のダメさを教えてくれた、見知らぬ酔っ払い


石原  自分の役割ということでいうと、僕の場合、ほんとに小さい話なんですけど、ゴルフや食事などに行ってトイレに入ったら、手を洗った後に必ず洗面台を拭くことにしているんです。次に使う人が気分いいだろうなと思って。

小田  素晴らしいですね! そういう小さなことの積み重ねで、人の人生って大きく変わると思います。そうだ! トイレといえば、今思い出したエピソードがあります。さすが石原さん、いいパス出してくれますね。

石原 (笑)エピソードってなんですか?

小田  25歳のときに企業研修をした時の話です。後に創業10年目で年商100億円を超えた会社の企業研修でした。私がサポートしていた当時は創業3年目で、初めての幹部を集めたコミュニケーション研修が名古屋であったのですが、そこで「コミュニケーションとは、相手の心を知ることです」と、25歳の私は生意気にも言いきったわけですよ。そしたら、幹部の一人に「そんなことを言っているけど、君は私の心を知っているのか?」と言われたんです。研修中に。嫌な人でしょう?

石原 (笑)。

小田  まだ若かったこともあり、カチンときてぶわーっとしゃべって、研修は終了しました。その後、何を話したのか、どんな行動をとったのか、頭に血がのぼっていたせいかまったく覚えていません。しかも、帰りの新幹線は座れないし、トレイも我慢して。

石原 (笑)トイレは行ったらよかったじゃないですか。

小田  本当ですよね。なんで新幹線で行かなかったんだろうと後悔しながら、品川駅についた途端、トイレにダッシュですよ。こういうときに限ってトイレは行列で、しかも個室では酔っ払いが吐いているという間の悪さ。

石原  よりによって。

小田  本当、よりによってですよ。もうふざけるなと。吐くまで飲むなんて、自己管理ができていないヤツがすることだと、頭の中で悪態をついていたときです。後ろのほうから、「あー、つらいんだろうな」という声が聞こえたんです。聞こえた瞬間に後ろを振り返ったんですけど、酔っ払いばかりでそんなことを言いそうな人はいないんですよ。

石原 (笑)見た感じ。

小田  そう、見た感じ。それで「そうか、あの人もつらいのか」と思ったときに、ハッとしました。「コミュニケーションとは相手のことを知ることだ」と言っておきながら、そのときの私は自分のことしか考えていなかったんです。

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石原  そこで気づくなんて、すごいな。

小田  つらいなんて1ミクロンも思えなかったんですよ。それで、俺は何をやっているのだろうと。人には偉そうなことを言っておきながら、自分は人を思いやる気持ちも持てないのかと、自己嫌悪ですよ。はち切れんばかりの膀胱も、すっかり忘れるくらい。

石原  俺、ダメだなと。

小田  俺、全然ダメだなと自分に絶望しました。その時に思ったんです。人に伝えたことは自分でも実践するし、これからは自分が日々心がけていることを話そうと。経営者だけでなく、見ず知らずの酔っ払いも、ときには「先生」になるんですね。いまだに誰が言ったのかわかりませんが、天の声だったのだと思います。

これからの時代は、縦社会と横社会が混合したハイブリッドな社会に


石原  前回「闇の才能」という話が出ましたが、たくさんの方々の人生を聞いてみて、大きな借金を背負っていたり、過酷なめにあったりした経験のある人のほうが成功すると思いますか?

小田  これまでの成功法則はそうだったと思います。でも、最近はちょっと違うパターンの闇を背負っている人も増えています。例えば、自分自身は幸せな暮らしをしているけど、たまたま海外旅行で遭遇した出来事によって何か使命を背負ってしまうとか、学校や社会、世の中、地球の闇を背負ってどうにかしたいと燃える20代の起業家もいます。そういう意味では、成功の法則も多様化しているし、新しい価値観の人が生まれてきている気がします。

石原  確かに最近の若者は、仕事に対する考え方も含めて、我々の時代とはだいぶ価値観が違ってきていますよね。

小田  私がコンサルをしている経営者から、「新入社員が入ってきたけど、20代の使い方がわからない」という相談を受けることがよくあります。私は考え方が逆だと思っていて、使うとか教えるという立場ではなく、若い世代から学べることはないですかと訊ねます。

以前はピラミッド構造で、学校の先生や医者、社長、上司など、立場が上の人の言うことには絶対服従という縦社会でした。でも現在は医者のいうことですら素直に聞かずにネットの情報などを信じる患者は少なくありません。医者と患者という関係性においても今はフラットな横社会になっている感じですよね。

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石原  なるほどね。まずは、そういった関係性における概念を取っ払わないといけない。

小田  そもそも20代の人たちは社会概念から違うので、これまでの概念で見ると確かにおかしいんですよ。仕事の能力も「ん?」と首を傾げたくなることが多い。でも、ユニークで個性豊かで、環境や思考が違うからこそ、そこから学べることもある。彼らを活かせる方法は何かという考え方にスイッチすると、インスピレーションを受けてこちらが変わってくるんです。

石原  どっちが上司でどっちが部下か、どっちが先生でどっちが生徒かわからない横の関係性ですよね。

小田  私はすでに横社会でもなくなり、次の段階がくると思っています。誰が先生で誰が生徒かがくるくる変わる、球面体みたいな関係性です。その象徴がオンラインサロンだと思います。年齢や経験、技術などの実績ではなく、状況によって詳しい人は誰か、得意な人は誰かで、先生が変わってくる。上がよくて下がダメということではない、ハイブリッドのような組織、コミュニティです。

石原  その中にも秩序はあるわけですよね?

小田  それがおそらく「共感」なんだと思います。常に上下が入れ替わるハイブリッドといっても、つなぎ目は必要ですからね。それが共感。そして、そのつなぎ目を提供するのがリーダー、旗振り役になっていく時代になるのではないでしょうか。

石原  夫婦間にも同じことが言えますよね。お金を稼いでいる方が立場が上という考えは許されてなくなってきている。

小田  夫婦、家族の形も変わってきていますよね。経営だけでなく、夫婦間の相談にのることも結構ありますが、正直ビジネスのほうが簡単です(笑)。

家族関係については、『ドラボンゴール』と『ONE PIECE』を例にするとわかりやすいのですが、この2つはファミリー漫画としてくくれます。でも、そのファミリーの概念がまったく違う。『ドラボンゴール』の場合、孫悟空という主人公がいて、ストーリーの中で結婚して子どもができて、これは血縁のファミリー漫画です。まさに、これまでの時代を象徴している内容だと思います。

一方で、今の時代を象徴しているのが『ONE PIECE』。血縁同士が敵になったりすることもあるストーリーは、血縁を超えた「クルー」という概念なんですよね。つまり、血縁よりも共感した仲間との絆のほうが強い時代になってきている。

石原  それはおもしろい考えですね。

小田  社会学的には拡張家族というのですが、大家族から核家族になり、2008年頃からは単身世帯が増えてきました。一人というのは、もはやバラバラになりようがない。そこでおもしろいのが、バラバラの単身家族同士が共感して架空の家族になるという現象が生まれていることです。漫画の中だけでなく、血縁を超え拡張した家族、共感が血縁を超えるという関係性が現実の世界でも起きています

石原  昔は家族が最小の共同体と言われていたけど、今はまったく違う。

小田  家族より仲間、血縁よりコミュニティという概念が、今後もっと浸透していくと思います。前回の最初に「血縁を超えた『物語』という目で客観的に見ると、自分の人生を俯瞰しやすくなる」というお話をしましたが、そういう考え方もしやすくなるのではないでしょうか。

石原  もっといろんな話を聞きたくなるくらい楽しくて興味深いお話をありがとうございました。漫画の続きも楽しみにしています。

『小田真嘉物語』はこちらから↓

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