対談_前編

「人生の棚おろし」から誕生した物語 ~幻冬舎ブランドコミック対談 前編~

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小田真嘉(おだ まさよし)
株式会社小田総合研究所 代表取締役、株式会社みらいのくらし研究所 代表取締役

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石原 正康(いしはら まさやす)
株式会社幻冬舎 専務取締役、株式会社幻冬舎ブランドコミック 取締役

「もし自分の人生が小説だったら……」キャラクターづけが成功したコミック化

石原正康(以下、石原) 『僕に人生の闇を教えてくれた先生たち』、読ませていただきました。グッと胸にくるストーリーだし、ものすごくためになる。読むことで自分が成長していくのがわかりました。

小田真嘉(以下、小田) ありがとうございます!

石原  小学校3年生のときに内職を始めるのを皮切りに(第8話)、キャディーになるための猛勉強(第10話)、タロット占い師(第16話)、セールスの手伝い(第20話)など、さまざまな仕事をさせられていましたね(笑)。

小田  本当にひどい話ですけど、全部実話です。「ママの新しいお仕事に必要なの」って、ルールブックを読んでゴルフのルールを覚えるのも、化粧品を売るためにパンフレットの内容を覚えるのも私ですからね。母には本当に鍛えられました。手に負えないのは、うちの母は子育てに成功したと思っているんですよ。絶対に間違っているんですけどね。

石原  小田さんを見ればすこぶるチャーミングな成功をしていると思うけど、息子の判断は別なんだ(笑)『僕に人生の闇を教えてくれた先生たち』は「まさよしくん」の人生が描かれているわけですが、それを通して、一人の人間の人生にはいろんな物語があるんだなと痛感しました。

小田  私はよく「自分の人生が小説だったら」と考えるんです。すると、なぜ主人公の人生のスタート(誕生)がその両親から始まったのだろうと思うわけですよ。そこにはちゃんと理由があって、その両親でしか物語はおもしろく盛り上がれない設定だからなんですよね。

石原  なるほど。物語ならば、そこに何かしらキャラクター付けがあるというわけですね。

小田  母に愛されたという人もいれば、おばあちゃんに愛されたという人もいる。父はひどい人だったという人もいれば、父は尊敬できる人だったという人もいる。両親がどんな人であっても、その人の物語(人生)を魅力的にするために必要だから、キャスティングされた。私の場合、特に母が強烈なキャラクターで、子どもの頃は本当に振り回されっぱなしでしたが、「キャスティング」という捉え方をすると、ものすごく考え方が変わるんです。

あなたの人生の作家は、なぜその両親からあなたの物語をスタートさせたのか、そのキャスティングによってあなたは何を授かり、何を学び、何を宿題のテーマとしてもらったのか。血縁を超えた「物語」という目で客観的に見ると、自分の人生を俯瞰しやすくなって、いろいろなことが紐解けるんです。

石原  そういう考えのもとにコミック化したわけですね。コミックだと、よりキャラクター付けが強くなりますよね。

小田  僕の人生がストーリー化しやすいというのもありますが、漫画家さんが優秀なんです。

石原  毎回、コミックの最後に〈あなたの物語を光り輝かせるヒント〉という問いがあります。その回のストーリーとリンクしていて、例えば第1話だと、「もし神様が自分の人生脚本を書いてくれるとしたら、そのストーリーは、どこから始まりますか?」「物語に欠かせない重要な登場人物(キーパーソン)は、誰だと思いますか?」「現時点で、今まで自分が歩んできた人生物語のストーリーはズバリ! 100点中、何点ぐらい気に入っていますか? それはなぜでしょう」というもの。1話ずつ読んで、これらの問いに答えていけば、読み終わる頃にはそうとう自分が変わりそうな気がします。

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小田  自信を持って言いますが、絶対に変わります!

石原  あの問いかけは素晴らしいと思います。自分自身を見つめ直すきっかけになる。

小田  すぐに問いに答えられなくてもいいんです。今は答えが出てこなくても、考えたという行為や自分と向き合った時間が、きっと後の人生に繋がってくる。まずは問いのボールを自分の人生に投げてみる。いずれスコーンと答えが見つかったり、腑に落ちたりするタイミングがくるはずです。

「人生の棚卸し」のすすめ


石原  重要なキーワードとして、「人生の棚卸し」という言葉が出てくるけど、実は僕も人生の棚卸しをしたことがあるんですよ。人生の棚卸しをすることで、当たり前ではあるけれど、自分の人生が過去から繋がっていることがよくわかりました。コミックの最後の問いに答えていると、それと似た感覚を覚えますよね。人生の棚卸しは多くの人にすすめたい。

小田  私もそう思います。絶対に人生の棚卸しはしたほうがいいです。そうすることで未来も見えてきます。

石原  でも細々書いていると、先に進まないんですよね。僕は今57歳なんですけど、28歳から人生の棚卸しを書き始めて、いまだ21、2歳までしか書けていません(笑)。すでにノート2冊分になっています。

小田  すごいですね。興味あるな、石原さんの人生。私は人の人生のストーリーを聞くのが大好きなんですよ。これまでたくさんの経営者の方々に会ってお話を聴いてきましたが、うまくいったことに関してはそこまで興味がなくて、なぜこの人はこの事業をやっているのか、この先この人はどうなっていくのかというストーリーに興味がある。

コンサルタントとしては、この先どうしたらいいのかわからないという人こそ、棚卸しが必要だと思っています。それを聞くことで、この人はこの先こういう方向にいったらいいだろうなというパターンが読めるんですよね。

石原  これまで何千人という方々に聞いてきた話の蓄積がものをいうわけですね。

小田  そうそう。私が必ず訊ねる問いのひとつが「これまでの人生、自分なりに変えてきたことはなんですか?」というものです。例えば、学生時代なら、部活の雰囲気が悪かったから変えましたとか、いつも部屋がちらかっていたけど掃除をするようになりましたとか。
それで、社会人になってからの話を聞いてみると、バラバラになった資料を整理するようになりましたとか、結局昔も今も同じことをしている人が意外に多い。そういった部分から、この人に合っているのはこの事業とこの方向性なんだろうなと。過去の話を聞くことで、なんとなく点が線に繋がっていくんです。

石原  漫画の中のまさよしくんもそうですよね。人生の棚卸しをして、「自分には何ができるのだろう」ということを真剣に考えて、そして吹き上がるように答えが出てくる。でもその答えは、そんなに大きな事じゃない。

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小田  そうそう。

石原  ちゃんと挨拶をするとか、人を励ましてあげるとか。そこから人間の深みというか太さが出てくるということが端的に描かれていて、見事な流れだと思いました。

小田  先ほども言いましたが、私は人の人生にもとても興味があるんです。だから仕事という枠を超えて、すぐに「なんでこれをやろうと思ったのですか?」「大変なことはなかったのですか?」「なぜ大変なことをやり続けられたのですか?」など、もうあれこれ聞くのが癖になっています。結果、自分の引き出しが増えていくんですけどね(笑)。今日はインタビューを受ける側ですけど、石原さんの人生にもすごく興味があります。

石原  うれしいですね。別な機会にぜひ(笑)。

闇から生まれる才能


石原  漫画の中で僕が特に印象に残っているエピソードが「ポンポン事件」。小学校2年生の頃の出来事だけど、実はそれが小田さんの人生に大きな影を落としていたという話です。

小田  詳細は漫画の第5話~第7話を読んでいただくとして、29歳のときに人生の師に「ポンポン事件」の話をしたら、「君が本来の力を発揮できないのは、インナーチャイルドが暴れているからだ」と指摘されたんです。

あの事件以来、自分が前に出て活躍したら誰かを蹴落としてダメにするんじゃないか。自分が活躍すると誰かが犠牲になるんじゃないかという気持ちが深く心に残っていて、そのトラウマが成功の機会を妨げていると。

石原  それを聞いてどう思いました?

小田  ハッとしましたね。たしかにそうかもしれないと。それがわかってからは、まったく気にしなくなりました。

逆の立場で経営者の方々の話を聞くと、私と同じように「なぜなのか自分ではわからない、見えない」ということが結構あるんです。「なぜ今ここで止まっているのか」「何が壁になっているのか」、コンサルタントという仕事はそれを見つけていく感じです。

石原  自分のことはなかなか客観的に見られませんからね。

小田  例えば、教育業界で有名な先生がいて、技術もあって先生が指導すると実際に子どもが変化する。もっとメジャーになってもいい方なのにいまいちパッとしない。話を聞くと、かなりの実績を残しているにもかかわらず「大勢の人の前で話すときは常に不安がある。自信がない」と言うんですね。よくよく話を聞いていくと、大きな理由が小さい頃の経験、体験にあるというのがわかるわけですよ。

石原  どういう聞き方をするんですか?

小田 「いつ頃から自信がなかったのですか?」「子供の頃からですか?」「どういうときに自信がないと感じるのですか?」など、予測をつけながらピンポイントで聞いていきます。すると、お母さんがお父さんに遠慮をして言いたいことが言えなかった人だということがわかってくる。先生はその影響を受けて同じように言いたいことが言えず、それが自信のなさという形で表れてしまった。

でも、それは先生のお母さんの話であり先生の話ではないんですよね。ですから、課題を分離することから始めます。そして、「なぜ、先生はお母さんの元に生まれたのだと思いますか?」という意味づけをし、「お母さんを通じて学んだことは?」と訊ねると、最終的には「自分のような家庭で育った子どもは多い。教育に携わったのは、自分が経験したことを学びに変えて、子どもたちに伝えていくため」という答えが出てくる。そうすると本人の前提条件ががらりと変わって、自信がないが武器になるんです。

石原  なるほど、本人がコンプレックスと意識していないことを見つけて、形を与えるということですね。

小田  そうです。できればコンプレックスを直視したくないという人は多いと思いますが、悩みや苦しみ、葛藤など、闇をきっかけに才能が生まれることは多々あります。ただ、その闇を受け入れるタイミングは人によって違うので、コンサルタントとしては、どのタイミングで、どこまで伝えるかがとても重要になってきます。

石原 「闇」は漫画のタイトルにもなっています。

小田  私の人生、29歳くらいまで闇続きでしたからね(笑)。でも、その経験が成功へと導いてくれたと思っています。「お陰様」という言葉をよく使いますが、文字通り、闇(陰)のおかげです。

世の中には能力、才能のある人がたくさんいます。私は能力の発揮の仕方には大きく2つのパターンがあると思っています。好きで楽しくてついついやってしまう、前向きな才能、これは「光の才能」。もうひとつは、悩み苦しみ続けたことが意外に才能だったりするパターンです。例えばアトピーで悩み続けた人が回復してアトピーの人を救うとか、自分が小さい頃にいじめられていたから、いじめられている子どもを救うとか。

石原  マイナス×マイナスがプラスになる感じですね。

小田  そうそう。私のセミナーでは、「これまで悩み苦しみ続けたことはなんですか」と問いかけて、ひたすらそれを書いてもらう作業をすることがあります。精神的に結構きついんですけど、そこから学んだ人生の教訓は何かをあぶり出すことで、プラスに変えていく方法を考えます。すると、自分のテーマが見えてきたり才能を発揮できるようになったりする。木を削って、削って、彫刻の立体人形ができるように、身が削られることで「闇の才能」が立ち現れたという人たちを私はたくさん見てきました。

漫画には描いていない強烈な母の「警察事件第2弾」


石原  どんどん奥の深い話が出てきますが、漫画には今に続く小田さんの人間性が形成されるエピソードが満載ですよね。先ほどの「ポンポン事件」が始まった第5話あたりから、読者がぐんと増えています。

小田  まだ読んでいない方もいるかもしれませんが、「ポンポン事件」というのは、強烈なキャラクターである私の母が、警察をも動かした事件なんです。あの程度のことで警察を動かすなんて、本来大問題だし、あり得ないですよね。それをやってしまうのがうちの母親なんですけど、実は警察を動かした事件はそれだけじゃないんです。

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石原  まだ漫画にも出ていないエピソード?

小田  これは漫画には入れる予定はないんですけど、28歳のとき、八ヶ岳に住んでいる知人の家に遊びに行ったときの話です。帰りがけに母から「今どこにいますか?」とメールがきたので「八ヶ岳」とだけ返信しました。すると、「そうだんか?」と返ってきたので、確かにビジネスの相談も兼ねていたので「うん、そうだよ」と返事をしました。

その後、何度も電話がかかってきたのですが、運転中だし面倒だから出なかったんです。そうしたら、知らない番号からも電話がかかってきて、同時に母からは「だいじょうぶか?」という内容のメールです。相談もうまくいったので、「大丈夫だよ」と返したら、また「本当に大丈夫か?」としつこい。すると、なんと次に「警察が動いているから大丈夫」というメッセージですよ。知らない番号は警察だったんです。

実は母は「そうなんか?」というメッセージを送ってきていたのですが、私が「そうだんか?」と読んでしまって、「そうだよ」と返事をしてしまった。その結果、母は「息子が八ヶ岳で遭難している」と警察に電話をかけてしまい、それは大変だと救助隊が出たというわけです。警察には平謝りですよ。特に大きな問題もなく調書にサインをして終わりましたが、28歳の息子に対してそれをするんですよ、うちの母親は。

石原  すごい愛情ですよね。

小田  愛情? これ、愛情ですか?

石原  愛情以外、感じないですよ。

小田  勘弁してください(笑)。思い込みが激しいんですよ。「八ヶ岳=登山=遭難」。「どこにいるの」「八ヶ岳」から、すぐに「そうなんか?」という発想になりますか? 愛情深いのではなくて、妄想です。

石原  でもその妄想も愛して、お母さんに付き合っているんでしょう(笑)。

小田  愛情は別として、そんな母に鍛えられたのは事実ですね。

対談後編へ続く

『小田真嘉物語』はこちらから↓

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